112233
最近、米ドルが勢いを盛り返すのにともない、ドル以外の通貨がこぞって値下がりし、特に値下がり幅の大きいのが日本円だ。円の対ドルレートは現在、2002年以来の最低を更新し、値下がりへの期待が強い中、円の投げ売りが市場の「共通認識」となっている。現在のような状況に直面して、「アベノミクス」の根強いファン達はひそかに喜んでいるのだろうか。というのも、通貨の値下がりと株式市場の高騰は政策決定者の当初からの狙いだからだ。だがすべての人がこのように楽観的に考えるわけではない。たくさんの不安の声が聞こえる中、国際通貨基金(IMF)は、「日本経済は円安に過度に依存してはならない」と警告を発し、日本の甘利明経済産業大臣も、「急激な為替変動は望ましくない」と発言。英国誌「エコノミスト」も、「安倍晋三首相は魔法使いか、それとも詐欺師か」と問いかけ、日本の主要紙「日本経済新聞」は円安で引き起こされる一連のマイナス影響について感情を交えない冷静な分析を行った。こうした批判の声の中、円安の魅力は大幅に減退している。
2012年末以降、アベノミクスは日本経済を牽引し、周期的な上昇を実現した。日本株の持続的な高騰が巨額の利益をもたらすと同時に、製造業購買担当者指数(PMI)、企業の利益率、インフレといった複数の経済指標が好転した。特に輸出産業が全体として再び活力を発揮するようになり、GDPの伸びを大きく牽引した。今月25日に発表された最新の輸出データをみると、日本の4月の商品輸出は年率換算で8%増加し、予測値の6%を上回り、日本経済にとって消費税率引き上げ後初の2四半期連続でのプラスとなった。ここからわかることは、輸出産業のこのような好調ぶりは、円安によるところが大きいということだ。
一般的には、ある国の通貨が値下がりするには、主体的な値下がりと受け身的な値下がりがある。ドルの上昇が円の劣勢を加速させるという受け身の値下がりに対し、これまで長く続いた大幅な円安は安倍政権の手で作り出されたもので、主体的な値下がりという部分が大きい。だが最近の市場の動きをみると、円の加速的値下がりはドルの値上がりによる受け身の要素が大きい。アベノミクスが持続的に進められる中、ドルの回復が円相場の今回の動きをさらに驚くべきものにしていることは確かだ。今月26日の東京外国為替市場では、円のレートは一時的に1ドル=123.33円まで値下がりし、7年10カ月ぶりの安値を更新した。それからわずか2日後の28日には、アジア市場での円相場は1ドル=124.14円まで下がり、約13年ぶりの最安値を記録。27日の銀行間外国為替市場では、100円の対人民元レート基準値は初めて100円=5元の水準を割り込んだ。11年10月に最高を記録してからこれまでの間に、円の対元レートは40%値下がりしたことになる。爆発的な円安と同時に、日系平均株価も北京時間の28日午前10時に00年4月14日以来の最高値を更新した。日本の財務省が公表したデータによると、今月23日までの週には、海外資本が持続的・大量に日本の株式市場に流れ込み、その規模は5612億円を超え、前週の1872億円の3倍近くになった。
「円安、株高」といった市場の動きから、アベノミクスが一定の功績を挙げたことは間違いないとわかる。円安は日本の輸出企業の利益を押し上げ、原油価格の下落とともに、経済成長に持続的なエネルギーを注入した。これと同時に、日本株の上昇がもたらした巨額の利益の効果が、日本の人々に「よい思い」をさせ、内需を効果的に牽引した。だが政策決定者は別の一連の問題を軽視していたようでもある。日経新聞が伝えたように、経済に対する円安のメリットが徐々に薄れており、試算によれば、国内総生産(GDP)への貢献度は0.2%に過ぎなかったという。これは一方では、円高の時に日本企業が生産拠点を海外に移し、日本経済の構造が変わったことがある。また東日本大震災後の燃料の輸入増加などが原因で、日本の貿易収支の黒字は07年以降は増加していないどころか、減少傾向さえみせており、かつて10兆円あった黒字が今は9兆円の赤字になったこともある。ここから日本経済に対する貿易の牽引効果が徐々に弱まり、日本企業にとっては投資がより試しやすい金儲けの道になったことがわかる。言い換えれば、輸出量の減少にともない、円安の効果も弱まっている。それだけでなく、過度の円安が原材料価格や食品価格の上昇を招き、日本の製造業と国内の消費にマイナスをもたらしていることは明らかだ。
さまざまな副作用を考え合わせると、政策決定者が現在の市場に向き合う時にはより客観的になるとみられる。甘利経済産業相や菅義偉内閣官房長官といった政府要人は為替変動リスクに注目するが、政策を考えると、円安を持続的に推進することが、今とこれからの相当長期にわたり主要な任務の一つになる。日本銀行(中央銀行)の黒田東彦総裁はこのほど行われた金融政策決定会合後の記者会見で、「2016年度上半期頃にインフレ目標の2%は達成できる見込みだ」と述べた。だが黒田総裁はこれまでは15年頃に目標を実現するとしていた。ここから、日銀が今後さらなる金融緩和措置を取ってインフレを誘導する可能性があると十分に信じられる理由があることがわかる。日銀が上場投資信託(ETF)を追加購入し、債券の購入を減らすとみる人もいれば、地方政府の債券を試験的に購入するという人もおり、また金融当局がインフレ目標を3%に引き上げるか、あるいは過剰外貨準備率を引き下げるとみる人もいる。どのような措置を取るにせよ、金融政策の緩和基調は変わらないため、円の弱気市場を支えるだけの土台は十分にあるといえる。言い換えれば、円の値下がりへの強い期待の中、懸念される一連のマイナス効果が経済の回復を阻害する主な要因になるかどうかは、複数の経済データをみてこれから検証していかなくてはならないということだ。だが否定できないことがある。それはアベノミクスが予定通りに目標を達成していないこと、当局者はこの点をしっかり振り返る必要があることだ。
引用元:人民網 2015年5月31日
この投稿をコメントする